2014年6月21日土曜日

agilentの展示会 AMF2014で感じたこと

おはようございました。
今週はパシフィコ横浜にてAMF2014が開催されていました。
日ごろ自分が整備しているためか、バイクの車検も一発合格し、超絶ご機嫌の私は、有給休暇という手段を使って参加する事にしました。

個人的に思うのですが、こういう展示会を出張扱いさせない組織になってきている日本企業というのは、とことん自爆したがっているのだと思います。
自分の周りだけに技術なんてありませんし、ましてや研究者でもない人間が、他分野の技術使わないで勝てる・食ってゆけるとでも思っているんでしょうか?
超絶に甘い考えです。イノベーションとか厨二病用語ほざく暇があるのであれば、こういう異文化交流にこそガンガン力を入れるべきだと私は思います。

生憎私の所属している会社は上(課長より上)から測定器関連にお金を使わないことを明言されておりますから、私個人の趣味ということで参加に至ります。ただ、その個人の超下級平社員にココ1~2年で何億も損失低減して頂いている事実に会社が気づかないというのは、悲しいものがありますよねぇ~。課長の決裁枠20万で、何が買えると言うのでしょうか?会社のトラブル対応で頻繁に使っている家に置いてある測定器すら買えませんよ?と…。

さて、愚痴はさておき、本題。
AMF2014では幾らか収穫がありましたが、それ以上に世間様の測定器ビジネスに対する姿勢不足が浮かび上がりました。
私が主に感じたのは次の点です。

  • 高速なシリアル信号技術の応用から、Reference Clock の jitter が問題になりつつあると分かっているにもかかわらず、誰もその正しい評価ができる環境を提供していない。
PCIe Gen4.0の話ですね。ますます速度が上がり、8GHz駆動になるというので、FR4基材では限界に近い構成になります。10GHzがおそらく技術的な限界だと思うので…
3.0の4GHz⇒8GHzですから2倍です。PCIe1.1の1.25GHzがお子様に見えますよね。実際、普通にジャンパー線してもアイが潰れにくかったので、騒いだ割には(DRAM規格と比べ)随分と楽な規格だな…と思ったものです。
しかし、今度はそうは行きません。Clock発信源のjitterの規格が厳密に定められました。このjitter範囲を厳密に守るということは、Reference Clockを厳密にしなくてはならないということにもなります。
原理原則に立ち返って考える必要がありますが。Clock発振器は水晶の機械共振という物性を利用した振動子です。その電圧が変動する⇒振幅が変動する(厳密には通過した充電電流で振幅が決まる)ということは、Clock発振器の電源に関しては厳密に安定化させる必要があります。
つまり、電源のノイズは厳密に制御されていなければなりません。
しかしこの問題とは裏腹に、電源に関してまともに議論できるエンジニアは誰も居ないのではないでしょうか?
痺れを切らしたIC・LSIメーカーがマルチチップパッケージという形で電源回路やバイパスコンデンサをパッケージ内に埋め込んで利用者側の低レベル加減を補っているのが現状です。
これ、非常に危険ですよね。Clock発振器の電源電圧がClock発振器の言っている電源規格の間をバタバタ暴れたら、jitterは規格に入りません
おまけに一般のPC電源は超絶に粗悪な電源です。一度測ってみたら分かりますがぶち切れしそうになります。
つまり、昔悩まされた“相性が悪いので動きません”という事態がまた起きる可能性が現れたと言うわけです。

  • 電源のノイズ除去比(PSRR)に関して殆どの人が測定に関して無知である。しかも、それを危険だとも思わない。
恐ろしい事にアジレントのエンジニアですら?マークの飛び出る内容のようです。
私が現役だった頃は電源インピーダンスなんて当たり前、PSRR(電源ノイズ除去比)こそが対処すべき問題だと口をすっぱくして熱く語っていたものですが、まだ世間は追いついていないようです。
過去このブログ記事でも書きましたが、1次側電源電圧が暴れる事によって2次側の出力にどれだけの影響を与えるか?というものです。
電源ノイズ除去比の例を出してみます。

見てのとおり、低い帯域だけでは話になりません。現実世界では基板のベタ+トランス結合による上の周波数(MHz帯)も計って何ぼです。2つめののグラフの電源は1次側と2次側での共振が見られるので、何かしら手を打つ必要があります。
尤も、これはあくまでも金のかかっている産業機器用のAC/DCコンバータの例です。現実はもっと酷いです。

計り方はきわめて安定化された電源に横からノイズ重畳用のトランスで振動を与え、出と入りの暴れ具合を比較するという単純なものです。ぜひ正しく計って、前向きな改善をして戴けることを望みます。

  • 三相のデバイスに関して、評価するジグが一切無いのに、誰も疑問を呈していない。
これも意外と誰も要望しないのですが、現実世界において、三相デバイスは結構複雑です。だからこそネットワークアナライザの6ポート以上が欲しいのですが、市場にはあまり多く有りません。
欲を言えば個人的にR(入射・ソース)、A(反射・Ch1)、B(通過・Ch2)、全て別ポートの9個端子で低周波から測れるゲインフェーズアナライザとしても使えるものを作って欲しいです。
相互インダクタンスの塊なので、単相毎に測定をやっていたら日が暮れるのですが、あまり理解されないようです。電気自動車やっている人はさぞかし大変だろうなぁ~と思うのですが、本人が重要性に気づいていないだけかもしれません
さっさとどこかの企業が作ってくれないでしょうか?産業機器業界でこれが発売されたら、寿命診断にもってこいなので、億単位を容易に稼ぎ出せる物凄い強力な武器なのですが…。

と、まぁこんな感じで今後の課題点と疑問点が浮かび上がりました。分野の違う人がたくさん居たので、技術の応用する成果はすごいものだという事が分かりました。
このブログを見ている方は、私が社会的都合で止める必要性を感じない範囲であれば勝手に技術の垂れ流しをしますので、存分に用いてくださいね。現地(日本語以外)の言葉でも良いので、リクエストしていただけると助かります。

ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。

2014年6月17日火曜日

近々の宣伝

おはようございました。
更新が少なくて申し訳ありません。無事に生きております。
そして、ロシアの皆様ごきげんよう。最近ロシアの方から急激にアクセスされ始めました。
どうやらチャット?でカーオーディオのPSRRネタを晒されているようです。
けしからん!もっとやれ!!
という事で、近々の個人的宣伝。

愛知県技術士会のワイガヤフォーラムにて講演させていただく運びになりました。
内容は
“最近の若い人の傾向と対策”
今、日本ではとんでもない新人が大量発生し、社会がまともに回らなくなりつつあります。
その歴史的背景と対策について、私なりの見解を述べます。
所謂ユトリ教育世代問題です。
まぁ、何を言っても経営者が段々低レベルになりつつある日本では、一度社会構造から見直しが必要なのかもしれませんが…。


あともう1点、会社である装置を修理しています。近々に部品が手に入り修理が完了すれば晒そうと思います。
こういう修理ネタはメーカー虐めに近い気がしますが、ここに書いてあることはあくまでも個人的な見解で一切の保障はしませんのであしからず。
おそらく設計上どの使用環境でも通用するネタですが、文句を言われると困るので、ココの説明に加えて大事なことなので、あえて2回目を言っておきました

会社ではこのネタをさらっとやってのけて、暫くの間生産停止する危険を回避しました。
額面にして最低数百万円、最大2億円ぐらいでしょうか?
いい加減、関係者連れて(と言いつつ、殆ど居ませんが…)飲みに行ける位の臨時ボーナスぐらい出して欲しなぁなんて思っている今日この頃です。

このネタを使って、これに関連する装置の延命措置ネタを記事にしますので、暫くお待ちください。実証して初めて晒します。
1のことを2~3ぐらいに膨らまして誇張することはたまにあっても良いかもしれませんが、無いことを言うのは駄目です。

ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。

2014年6月11日水曜日

今日の小ネタ NEMIC LAMBDA EWS電源インピーダンス

おはようございました。

今日の小ネタはNEMIC LAMBDA製のEWSという電源のインピーダンスです。


…悪くは無いのですが、制御とコンデンサの切り替わり箇所における共振の抑え方が不適切であることから、少し手抜き感が感じられます。
設計者の方は精進してくださいね。

ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。

2014年6月3日火曜日

製品の戦略、可能性と技術による決まり方

おはようございました。
日本では梅雨と呼ばれる時期に入りました。
この季節になるとバイクに乗れないのでストレスが溜まり易くなり、精神衛生上とても良くありません。
ハウスダストの嫌い(アレルギー)な私にとっても天敵の季節でもあり、喜ぶのは下着が透ける事にエロスを感じる好色家の皆様ぐらいではないでしょうか?

もちろん私は好色家ではありません、弩スケベです。
物事は正しい表現をしましょう。


さて、つかみも取れずに掠った所で今日の御題。
世の人が言うには設計段階で製品に関わる品質の良否に関しての8割が決まると言います。
私はこれにもう少し味付けをすべきだと思います。

例え製品が良い物であっても、使い道・感動・所有感の充足がなければ品物は売れませんし、会社として赤字は必至です。

私は、企画段階で成功の可否が8割方決まると提唱します。
技術も市場の能力も会社の能力も全てが身の丈に合っていないと、製品はヒットしません。

例えば優秀な技術があったとしても、世の人が良いと感じなければ商売にはなりません

車ならば日本車で言うところの三菱・アイ、日産・初代ティーダ、トヨタ・オーリス、何であんなに車としては上出来であるのに、あんなに売れなかったのか?
今でも不思議なように見えますが、日本の顧客にとっては全部中途半端な位置付けの車である事がよく分かります。
例えばアイであれば軽自動車だから売れません。アレがコンパクトカーであれば市場が全く様変わりしていたでしょう。ホンダのFitに並ぶ製品にすらなりえていました。(FITではないところがミソ
BMWのi3が賑わっていますが、あんなのより早く先手を打てていたことは想像に難くない。
ティーダ、価格が中途半端でした。いい車であっても、日本人は価格で物を見ます。そして、安い車なのに若干高め価格設定は微妙な空気を生み、その後にノートが販売されて自爆し、更に泥沼化しました。
オーリス、カローラランクスを少し大きくしたために都市部の連中が引きました。つまり、狭い道路にこの車は厳しいのです。かといって高級車でもありません。作りが安いので、郊外の顧客は2ndとしても、1stとしても優秀な機能をなしません


最近は過去の技術があると思い込んでしまったがために、まともな商品になりえずにコケた例、コンセプト倒れなものもあります。
最近のソニー製品:コンセプトは良いときがありますが、製品に仕上げる技術・能力が無く、途中で企画倒れし始め、比較的早期に妥協が混ざり始めます。製品になる頃には、よく分からない変なものが仕上がって市場に流れます。
少し前のゲーム機:ソフトウェア会社に開発できる力がないハードを作ってしまったがゆえに微妙な空気が流れました。
最近のスポーツカーもどき:車体も足もブレーキもサスもエンジン、また補機類までもが中途半端。何一つまともに作っていないので、皮だけの中身のない車が仕上がりました。えぇ、代表例はあえて86・BRZとは言いませんが…。

コンセプト倒れは決して小さな問題ではありません、そこに技術の軽視、技術というものに対しての不敬の表れが企業として現れているからです。
もうこの会社に○○を開発する能力がないことを世に知らしめている・公然と暴露している。
そういういう事を平気で実践CM行っているのですから、余計に性質が悪い内容です。

スバルなんかはさっさとトヨタと手を切ったほうが良いんじゃないかと思えるぐらい可哀想で仕方がありません。1から開発させて貰えていたら何の問題も起きなかったものを、横槍入れまくられて、失敗作の流用までさせられて…アレじゃぁ被害者ですよね?

さて、不思議なほど“お前が言うな!”と言う事例が世には多く存在します。
就職活動でも散々言われている内容ですが、こういった自爆をする会社は自己分析が足りていません
あれれ?会社側が散々面接の場で学生を相手に説教垂れていませんでしたっけ?
業界の位置付けや、会社単位の相関性、金の流れ、客の動向と言う比較的見え易い物にばかり気を取られ、肝心な自分(会社)の能力は何か?会社は一体どのぐらいの技術力を保てているのか?と言うことの見える化を怠っている訳です。

そりゃ難しいですよ?技術の見える化なんて、数値では間違いなく表現できません。ぼんやりとした像が出るぐらいで、そこから先は何も具体性を生みませんからね。
一時期誰かさんが流行らせた“意味の無い数値化による意味の無い評価方法”で評価するしかありませんが、事務しか知らない役職・経営陣がその意味の無い数字を出せるわけもありません
そもそも、黙っていたら技術が衰退すると言う根本かつ重要な問題を知りもしないでしょう。

自分(会社)が実社会相手に描ける像なんていうのは、おおよそそんなもんです。
画にはなんとなく描けそうだけど、よく分からないものが仕上がってしまいます。
そのよく分からないものを自分なりの解釈と意思判断で動かす…経営なんてそんなもんです。
だからこそ、経営者をこなす人は芯の通った変人である事が求められます。
他人の顔色伺って経営することは、自ら地雷に足を踏み入れること同然です。
また、他人の顔色を伺うと言うことは必然と数値を気にし始めますから、数値だけで経営をし始める動機にもなります。
そして、数字だけで経営し始めたときは、その会社に終焉が来たことを意味しています。

経営は難しいし、何も無い状態では技術の位置なんて知りようもありません。
ただ、近くに真の技術者がいるか、もしくは自分自身が真の技術者であれば、自分の立ち位置ぐらいは周りの製品群のレベル・似たような立ち位置の人からおおよそ推察ができます
そして、自分(会社)にとっての目標・夢と、現実世界での落とし所を表現することぐらいは比較的容易に行えます

コンセプト倒れって言うのは“夢と現実を区別する”そういう事すら出来ていないから起きる訳です。
要は妄想の厨二病と同じ状態な状況であると言えます。

ね?厨二病と同じ事に気付いて初めて危機感覚えたでしょ?
“俺は本気を出せば出来る人間なんだ!”とか思っていても、“自分の能力の限界を知らない厨二病患者がただ妄想しているだけ”ですから、結果が伴う訳がありません。
“貴方の本気”の底上げをするには日々の鍛錬と努力、そして感性の磨き上げ以外に手はないのです。

会社でも個人でも、内面的に成長し続ける意気込みが無くなったら、そこで人生(社史)と言う名の壮大なゲームは終了なのです。
尤も、腐りたくて腐っているなら誰も止めませんけどね…。

これを見て見苦しさを微塵でも感じたのであれば、周囲には身の丈にあったものを求め・要求し、自らは日々精進して、その身の丈より少し背伸びできるようになることをお薦めします。



ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。

今回の小ネタノーケン製KRVの修理

最近、よく
『こわれたから直して』
と、精密機器を渡されるのですが、
分解してから言わないでほしいと思う今日この頃です。

こういう機器の故障修理をするに当たって肝心なのは、どんな状態で壊れたのか?というのを分解しながら状態を観察し、推測することだったりします。
そんな訳で、分解された状態で渡されると『???』となり、解析するのにえらく手間取るのです。
最近私大方のものは直すのが分かって来たらしく、分解して自分で構造を納得してから渡してくれます。
正直勘弁して欲しい…と思う今日この頃です。

で、今日の御題はノーケン製KRV
誘電率という物性を利用した検出器です。
電気的共振による検出で、LCの共振中を平常時に設定します。検出時は周囲環境の電極物質が近傍に近くづくと、比誘電率が1から外れることによって共振が外れて電圧が変化し、検出します。
構造がいたって単純で色々と検出精度が高く、色々な業界で使われている方式です。

さて、あいも変わらず?に壊れた箇所は

  • トランスの足が金属疲労により破断
  • コンデンサの寿命による劣化

の2点。非常に教科書的な壊れ方です。
そもそも、熱いところで使用している上に、隣でハンマー使ってガンガン叩いているので、嫌でも金属疲労がおきます。
直接的な原因は電源のコンデンサが劣化してPSRRが劣化したので、定期的(100or120Hz毎)に共振が外れ、綺麗に安定して検出できなくなるというものです。
トランスはばらしたときに偶々気付いたと言うほうが正しいかもしれません。(厳密には検出精度を幾らか左右させていますが、そんなに問題視されるものでもない)
重いものは電気用接着剤で固定するという基本的なことが守られていない素敵仕様です。

コンデンサは相変わらず85℃品が使われているので、ちょっと温度の高い場所で使っているとあまり時間が経っていなくとも肝心な共振が外れ易くなり、測定器としての機能が壊れます。
産業用途だって言ってんのに、どういう神経しているんでしょうね?設計者を小1時間問い詰めてみたいところです。

そんな訳で、電解コンデンサを入れ替え、トランスの金属疲労箇所のはんだ補修とポリアミドでの固定。これだけで簡単に本日の日給分が稼げました。時間にして30分。




ちなみに、電解コンデンサと並列にセラミックや、フィルム系のコンデンサを入れて、リップル電流を下げてあげる工夫をすると、もっと寿命が延びます
コンデンサの寿命はあくまでも、外気温度に加えて内部発熱で上がった温度が基準です。
リップル電流を減らすことはとても重要なことです。
電源を触る設計者は、どの程度のコンデンサを並列化すれば価格性能比が一番優れるのか?
幾らか実例で計算してみて、実物を見て、確認しておくことをお薦めします。

ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。